3.11被災者による『スイーツの缶詰』ストックのすゝめ
2011年3月11日、東日本大震災が起きた時、筆者は仙台市内に住んでいた。
幸い津波被害は免れたが、陸・海・空の交通機関がすべて止まってしまったため、何日間か食料が全く手に入らないという経験をした。
市街地の中心部に行けば開いている店もあったのかもしれないが、自宅近所のスーパーやコンビニは全滅だったのである。
冷蔵庫(停電しているのでただの保管庫)の残り物を食べ尽くしてしまうと、もう食べるものがない。
5日間停電が続いたままなので、炊飯器でお米は炊けないし、簡易ガスコンロでなんとかパスタは茹でられても、かけるソースがない。
そんな時に活躍してくれたのが缶詰だった。
ただ、その時ストックしていた缶詰は、サバの味噌煮ばかりが15缶ほど。
贅沢を言っている場合ではないのだが、毎食同じ缶詰ばかり食べているとさすがに飽きてくる。
また、3日もすると体が甘い物を強烈に欲しがるようになる。
これは、実際に被災してみないと理解できない感覚かもしれない。
震災の4日後くらいから徐々にスーパーや食料品店が営業を再開し始めたが、入荷する量がわずかなため、1人3個までといった制限がかけられた。
毎日近所のお店の営業情報を収集して、開店時間の数時間前から並ぶ。
商品を売り切ったら営業終了なので、並んでも買えない日もあった。
ただ生きるためだけに行列に並ぶ。 食べたい物ではなくその日手に入れられた物を食べる。 そんな生活が1週間くらい続いた。
現代の日本においてはなかなか遭遇できない、特別な体験だったと思う。
自宅マンションは倒壊こそしなかったが、かなり激しく損傷した。
大きなヒビ割れが壁のあちこちにでき、ところどころはコンクリート片が崩れ落ちて
内部の鉄筋が剥き出しになっていた。
窓枠が歪んで窓が閉まらないので、すきま風がとても寒かった。
こうした体験をしたおかげで、防災対策には手抜きをしなくなった。
家具の転倒防止対策や飲料水、備品のストックはもちろんだが、特に注意を払っているのが食料品のストックである。
食料品ストックのポイントは、必要最低限という枠・常識を取っ払うことだ。
理由は次の通りである。
大きな災害で被災すると、たとえ身体や自宅が無事でも精神的にかなり辛い思いをする。
そんな時、十分な食料品のストックがあることで、不安な気持ちを和らげ、食べることで心身が元気になるからだ。
こうした実体験があるので、現在は「なぜそんなものまで?」と驚かれるような食品までストックするようになった。
その多くは、震災直後、欲しかったのに手に入らなかったものだ。
たとえば、お米やパスタなどの炭水化物、缶詰やレトルト食品はもちろんのこと、冷凍庫にはお肉もストックしておく。
停電になって自然解凍したら、簡易ガスコンロで焼肉が食べられる。
そして先述のように、被災して数日経つと甘いものが欲しくなるので、好きなお菓子やチョコレートもたっぷりストックする。
スイーツも、今はよくできたケーキ缶詰がある。 味も普通のケーキと遜色ない。
震災後、このケーキ缶詰は、筆者の大事なストックリストの1つになっている。
そんなもの非常時には必要ないのでは?と思う人もいるだろう。
しかし、そんな人も実際に震災を体験すればきっと分かってもらえると確信している。
通販で買うなら『キャンリッチ 』というショップがおすすめだ。
ケーキ缶詰はもちろん、ユニークな缶詰をたくさん取り揃えている。
食品は一度ストックしたら終わり、ではない。
保存食品といえども賞味期限があるからだ。
筆者は、おおよそ3か月に1回、ストックしてある食品の賞味期限をチェックして、おおよそ残り1か月を切ったものを別棚に移す。
そして、普段の食事とともに消費し、消費した分を新たに購入するようにしている。
こうした作業は、実際に災害に遭わないと習慣化するのは難しいかもしれないが、習慣化できれば災害時には大いに役立つはずだ。
食欲は人間というか、生き物の最も原始的な欲求ということもあって、実際にそれが脅かされると、ひどい恐怖や切迫感に襲われる。
このストレスから解放される安心感は、お金には代え難いものだ。
今、日本は地震の活動期に入ったと言われており、それと呼応するように火山活動も活発化している。
日本に住んでいる限り、どこであっても防災対策は待ったなしの状態だ。
今こそ、「備えあれば憂いなし」という先達の言葉を胸に刻んで、粛々と災害に備えてほしい。